ダイヤモンドが見れる見れない

この間、お寿司屋さんにお仕事仲間と伺った際に、親方と「偽者」についての話で盛り上がりました。偽者のお寿司屋さんについてどう思いますか、と私がお聞きしたためです。

即答、「腹が立つ(笑)」が親方の答えでした。

(笑)

実は私も、親方の言葉を借りれば・・・腹が立ちます(笑)

偽者の鑑定士やジュエラーにです。

よく、業界の中でも「私はダイヤモンドが見れる」という言葉をつかう人がいるのですが・・・

どう見れるんだろう、何を見れるんだろうと思う時があります。

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ソムリエの資格を持っているからといってワインのスペシャリストとは限りません。私はカラーコーディネーターの資格がありますが、プロフェッショナルとは到底言えないレベルです。

それと同様に、宝石鑑定士の資格を持っていても、その資格を取る前、もしくは後にどのような研究を重ね、そしてどれだけ宝石を見ているか(私の場合→ダイヤモンド)にかかってくるわけです。

逆に言えば、様々な事情で宝石鑑定士の資格を持っていなくても、ダイヤモンドを取り扱っている長年のキャリアでダイヤモンドが見れる人がいることも事実です。

私たちはジュエラーとして消費者のみなさんに誤解のないお仕事をしたり、誤解のない情報公開をするのが義務とされています。私もこの点に特に(激しく!)賛同しています。

お洋服はとても身近な存在なので、この生地が、この縫製が、と目利きのようにある程度品物の良しあしが判断することができるように思います。ただ、ジュエリーの場合、それがなかなか難しいものだと思います。

身近な存在に感じている方もいらっしゃるかも知れませんが、まだまだそうではないと思います。だからこそ、信頼していただけるように、謙虚な姿勢で説明をしなくてはならないわけです。

わかりにくい商材は、わかりにくいまま販売することができてしまうので、「なんだか怪しい」「なんだか怖い」となり、そのことから「どうせ買うならば海外ブランドのほうが信頼もあるし」という考え方に繋がって、国内ジュエリーブランド離れが進んでしまっている結果が今のジュエリー業界の様子なのではないかと思います。(もちろんそれだけではないのですが)

消費者の方には、宝石鑑定士の資格を持っている=宝石の鑑定に必要な基本的な知識を持っている人、と思っていただくのがよいかと思います。そう思っていただくことで、私たち資格保持者もその名に恥じないように研究を続けることができます。

私は毎日何十点もの宝石を顕微鏡やルーペで見ています。出来上がったジュエリーや、決定したため、加工を職人さんに出したものが上がってきて、出来上がり具合を検品をするためです。枠にセッティングされているダイヤモンドは1点あたり100石以上になるケースもあり、さらに直径が1㎜まで小さなものまで確認をしています。一つ一つのダイヤモンドの表情を確認していく作業でもあります。つまりは私が日常見ているダイヤモンドは枠に留まった状態のものを見ることが多いわけです。枠付きのダイヤモンドを見る割合が80パーセント、そして枠無しの状態で見る割合が20パーセントではないかと思います。裸石と言いますが、その状態で購入を希望される方へお勧めする際に、このダイヤモンドの魅力点などを顕微鏡で確認して記述してお渡しすることもあります。

また私は、カラーダイヤモンドも毎日見ています。それは枠に留まった状態もの、そして枠に留まる前のものです。カラーダイヤモンドには無数に色の種類があります。国内でこれだけ沢山のサイズ、多くのカラーを在庫として持っているダイヤモンド企業は他にないのではないかと思います。(あれば不勉強なので教えていただきたいです)以前鑑定機関から、色サンプルとして購入したいと言われたこともあるぐらいです。様々な色の違いを見ることができる環境にいることに感謝していますし、他のジュエラーよりもその点では特に知識を深めることができています。

大まかにまとめると、私のキャリアの場合、業界歴は13年、米国宝石鑑定士の資格あり、カラーダイヤモンドの知識が3割、カラーレスダイヤモンド(ジュエリー枠付き)の知識が4割、カラーレスの裸石3割と言ったところでしょうか。私がダイヤモンドを見れるか、と聞かれたら業界の同じ年齢の方々と比べれば「見れる」かと思いますが、DIAVANTEのダイヤモンドを選別しているキャリア40年の河村から比べたら幼子のようなものです。「見れる」だなんてとても言えません。

また、ダイヤモンドを見るという作業は、学校で教えてもらったカットやカラーやクラリティー(内包物)や、プロポーションを見ることだけに限りません。

審美眼が必要になります。ダイヤモンドの顔の表情や表面の照りや輝き、「性質(たち)」と見るわけです。目利きとは、審美眼だと思います。

どれだけたくさんのダイヤモンドを見たかによって審美眼は培われます。ダイヤモンドだけではなく、美術品や美しきものすべてに造詣が深くなけれは審美眼は培われません。美しいものを見ていなければ、何が美しいか、わからないと思います。

なので、まだまだキャリアが浅く、ダイヤモンドを時々しか扱っていない方が宝石鑑定士の資格を以て「ダイヤモンドが見れる」と言っているのを見ると本当に苦しくなります。ウソをついているということに悲しくなるのではなく、こんなに簡単に「見れる」と言ってしまう人が増えたら・・・この業界はどうなってしまうのだろうという気持ちになるから悲しいのです。

私たちはもっとがんばらなくてはならない業界なのです。セールストークだけうまくなってはダメなのです。

以前、ポーセラーツの先生がおっしゃっていました。「今はちょっと習っただけで誰でも先生になれちゃう・・・本当に怖い時代です。」と。

インスタ映えというような言葉が流行っているようですが、

沢山の情報の中から正しい情報を発信している人を見つけることができるのはそれもまた審美眼がある方だけに限られたことなのかもしれません。

 

 

 

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