カラーダイヤモンドの色の範囲

「ダイヤモンド」には、ほぼ全種類の色が存在します。

大まかに分類すると以下の通りです。

「無色透明」「ホワイト( White )」「イエロー( Yellow )」「オレンジ( Orange )」「ピンク( Pink )」「レッド( Red )」「パープル( Purple )」「バイオレット( Violet )」「ブルー( Blue )」「グリーン( Green )」「ブラウン( Brown )」「グレー( Gray )」「ブラック( Black )」

 

 

カラーダイヤモンドの色の要因

なぜ「カラー」になるのか・・・・・。

残念ながら完全な科学的証明はまだされておらず、不明な部分が多いのが現状です。

分かっているのは、「放射線の照射などによる結晶構造の変化による光の吸収」、「ダイヤモンドの生成過程で混ざった何らかの不純物による光の吸収」「地中でダイヤモンドに圧力が加わり結晶構造が歪む(塑性変形)ことによる光の吸収」などが原因ということです。

 

<色の起源など>

◇ピンク&レッド・・・窒素原子が取り込まれ、その隣の炭素原子が欠けることでピンクやレッド以外の光がダイヤモンド内部で吸収され、ピンクやレッドの光のみが外に出てくることによりピンクやレッドに見える。

◇ブルー・・・・・・・・1カラットのダイヤモンドは約96億個の1兆倍の炭素原子からできていますが炭素原子1億個中に5~6個以下の割合(0.05~0.06ppm)でホウ素原子が取り込まれることで青色以外の波長の光が吸収されダイヤモンドが青色に見える。電気の伝導性があるものがある。

◇グリーン・・・・・・・取り込んだ窒素原子2個にはさまれた炭素原子が欠けることで緑色になる。全てのグリーンダイヤモンドは放射線の影響を受けて色が付くので天然で色が付いたか人工的に色が付けられたかの判別は不可能なものが多い。このような場合原石の段階で鑑定機関に持込み、天然のカラーダイヤモンドであることの証明を取ることもあります。その後研磨作業に入り、鑑定機関と協議の上、ガードルの近くにナチュラル等を残し、鑑定された原石と研磨されたカラーダイヤモンドが同一である証明とします。天然だと放射線の影響が限定的で表面のみがグリーンのことが多く研磨するとグリーンでなくなることもある。

◇イエロー・・・・・・・・取り込んだ窒素原子の含有量が炭素原子100万個に対して10~5500個(10~5500ppm)の割合で含まれることで黄色になる。

◇ブラック・・・・・・・・・ダイヤモンド内部に含有する鉱物(グラファイトや鉄鉱石)などのインクルージョンが多く含まれ、これらの鉱物の色を反映して黒く見える。

◇カメレオン・・・・・・・水素が入っている。100~150℃程度まで加熱した場合や長時間暗い所に置いた場合に一時的に色が変化するものをカメレオンダイヤモンドと呼んでいる。

 

<カメレオンの色の変化>

一般的にオリーブグリーンの色をしているものが多く、色の範囲はイエローイッシュグリーンからグリーニッシュイエローが多くディープやダークカラーが多い。少しオレンジがかったイエローに変色するが中にはごく稀にインテンスオレンジイエローにまで変色するものもある。

これに対して、ダイヤモンドそのものは天然ですが処理により色が付けられたダイヤモンドは「人為的な処理による色( Artificially Treated Color )として区別され、処理の方法により個別に情報開示されています。

人為的に色をつける主な方法は、(1)放射線照射処理 (2)高温加熱処理 (3)高温高圧(HPHT)プロセス (4)コーティング などの方法があります。

 

 

カラーダイヤモンドの産出量

ピンクダイヤモンドの場合、全ダイヤモンドの0.01%位が産出量と言われています。

いろいろな数値が発表されていて、資料によって異なりますが、無色のダイヤモンド10,000個に対してナチュラルカラーダイヤモンドは1個から多くても10個以内と言われています。

この数値からもナチュラルカラーダイヤモンドが非常に稀少価値のある宝石だということが証明されます。

ファンシーカラーの内で産出量の多いカラーとしては、イエローダイヤモンド、ブラウンダイヤモンドが挙げられます。ただし、好まれる色合いの価値の高いものはイエローダイヤモンド、ブラウンダイヤモンドの全体の中では多くありません。反対に産出量が少ないものがブルーやレッドですが、最も希少性の高い(産出量が少ない)色は純色の「 Fancy Vivid Orange 」だと言われています。そのほかに純粋な色で「 Red 」、「 Vivid Green 」、「 Vivid Blue 」、「 Vivid Violet 」、「 Vivid Purple 」は極めて希少です。

 

 

カラーダイヤモンドの鑑定について

カラーグレードは、マスターストーンやマンセルのカラーチャートとフェイスアップで比較し決定されます。(通常のカラーレスダイヤモンドが横からチェックされるのとは異なります)

 

 

カラーダイヤモンドの色のグレーディングと記載方法

一般的なグレーディングレポート(鑑定書)に記載されるカラーグレードの表示方法は、

【ファンシーグレード用語】+【色相】 となっております。

ファンシーグレード用語は、明度、彩度により以下のようになります。

・ファンシービビッド( Fancy Vivid )

・ファンシーインテンス( fancy Intense )

・ファンシー( Fancy )

・ファンシーライト( Fancy Light )

・ライト( Light )

・ベリーライト( Very Light )

・フェイント( Faint )

・ファンシーディープ( Fancy Deep )

・ファンシーダーク( Fancy Dark )

ファンシーカラーのグレーディングに用いる色相には「パープル」「レッド」「オレンジ」「イエロー」「グリーン」「ブルー」「バイオレット」などの27の色相があり、これにピンキッシュ、ブラウン、ブラウニッシュ、グレイ、グレイニッシュの6色とホワイトを加えた合計34色があります。GIA方式では色相、彩度(色の鮮やかさ)と明度(色の明るさ)がグレーディングされます。

グレーディングでは例えば「ファンシー・ビビッド・パープリッシュ・ピンク( Fancy Vivid Purplish Pink )」と表記されます。日本語に訳すと「鮮やかなパープルがかったピンク」となります。

 

 

ファンシーカラーのスケール表イメージ

 

 

上図の白丸の A、B、C のファンシーグレードは、いずれも「 Fancy 」の範囲となります。「ファンシーダーク」と「ファンシー」の場合「彩度」の範囲はほぼ同じですが「明度」は「ファンシー」が高く、明るい色で「ファンシーダーク」は低く暗い色合いになります。

A と B は明度の違いです。A の方が一般的に好まれますが、人によっては「色が薄い」と感じます。また B の方がしっかり色が濃く見えるため、B が A よりも好まれる場合もあります。

B と C の違いは、彩度にあります。BのほうがCよりも鮮やかな色合いを持っています。

上図のように同じ「 Fancy 」に評価される A、B、C でも、A は「 Fancy Intense 」に近く、B は「 Fancy Dark 」や「 Fancy Deep 」に、C は「 Fancy Dark 」に近いので、一般的には A が一番『高価』で次に B となり、C は一番安価となります。

このようにカラーダイヤモンドの価格の評価はグレーディングに基づく判断だけでは正確とはいえません。それぞれのグレードにおいてその幅が広く1つ1つ実物を見比べながら評価する必要があります。

同じ Fancy Color でも A と C では、10倍以上価格の差があるものが多く存在します。

ただ、肉眼で見たときにどのダイヤモンドが希少価値があって高価であるかの判断はカラーレスダイヤモンドと違って非常に分かりやすいと言えます。

 

 

混同しやすい表記例

次のような例は一見混同しやすいので注意が必要です。

Ⓐ「○○ グリニッシュ・イエロー( Greenish yellow )」と

Ⓑ「○○ イエローイッシュ・グリーン( Yellowish green )」など似た評価の場合です。

Ⓐは「緑色がかった黄色」⇒「イエローダイヤモンド」

Ⓑは「黄色がかった緑色」⇒「グリーンダイヤモンド」

になります。

また、次のような例もあります。

Ⓒ「○○ グリーン・イエロー( Green yellow )」と

Ⓓ「○○ イエロー・グリーン( Yellow green )」です。

ⒸⒹはグリーンとイエローがほとんど同じ強さで、どちらが強いとは判断しかねる場合に使われます。

しかしあえて言うならイエローが強い場合がⒸで、グリーンが強い場合がⒹとなります。

 

 

カラーダイヤモンドのカットについて

カラーダイヤモンドは色を最重視して最大限の発色が得られるように様々な形にカットされます。ラウンドブリリアントカットは他のカットに比べてフェイスアップでは輝きが強く色が薄く見える為、カラーダイヤモンドはラウンドブリリアントにカットされることは大変稀です。ラウンドブリリアントカットは数多いカットの種類の中でも最も良く輝くカットのひとつですが、輝きが強いと色が飛んでしまうという欠点があるのです。例外的に他の色に比べて産出量の多いイエローやブラウンダイヤはラウンドブリリアントにカットされることも多く、またピンクダイヤなどの0.10cts.以下のサイズのものも、ラウンドブリリアントにカットされることは多いようです。

しかしながら、稀少価値のある色で、ある程度大粒のカラーダイヤモンドがラウンドブリリアントにカットされることは大変稀なことです。

特にブルーの色はラウンドブリリアントにカットすると色が出にくいことから、色の濃いブルーのラウンドブリリアントカットのダイヤモンドは大変希少です。

また、一般的にエメラルドカットよりラディアントカットの方がフェイスアップで色が濃く出ることが多いと言われており、ファンシーカラーダイヤモンドのエメラルドカットは大変希少です。

このようにカラーダイヤモンドでは色を最も強く、きれいに示すことができるカットがそのダイヤモンドに対して最良のカットだとされています。

カラーダイヤモンドの鑑定では色とキズはグレーディングされますがカットの表示はされません。ラウンドブリリアントカットであってもカラーレスダイヤモンドのようにはカットの表示はされません。